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碧い瞳は美男の証 6

天井に向かって吐いた煙を見上げた。窓から覗く外は暗く、街の灯りが弱弱しく点在している。スコットランドヤードに異動してきた時に持ち込んだ、年季の入った揺り椅子を揺籃のように動かしながらウィンザーは思案に暮れていた。長身で恰幅が良く、顔立ちのくっきりとした見目のせいか歳を重ねるごとに威圧感が増していて、若い刑事からは敬遠されることも多

自由からの逃走 2

“妖魅”という名の実験の被験者としてこの『サルバトーレ』ロンドン支部に来てから約半月が経過した。ヴァレンタインの言っていた通り、”青年”の血管が透けそうなほど青白かった肌は今ではすっかり健康的な色味を出しており、あれから肉体が自分のものではないかのような妙な浮遊感もなく”魂”が日に日に肉体に順応しているという実感を増幅させている。

造花の花束

春は妖精の季節だと思う。フリージア、ネモフィラ、チューリップ、ガーベラ、カーネーション、すべての花に春の妖精が宿っている。妖精は陽気に誘惑されてやって来て、息吹と恵みを与える。妖精というものは多くの人間が想像する通り愛らしく、善良な存在だと思うだろう。しかし、いつも人間にとって良い存在となり得るわけではないのだ。時に、その可愛らし

碧眼の怪物(140字SS)

その碧眼は知っている。わたしが彼を畏れていることを。その碧眼は知っている。わたしが正直者ではないことを。その碧眼は知っている。わたしが真人間ではないことを。その碧眼はわたしに教えている。彼が人ならざる者であるということを。いつだって彼はわたしに真実を教えようとはしない。只笑って仮面の下に隠すだけだ。今日も倫敦の街だけが、彼の善悪も

碧い瞳は美男の証 5

「実に憐れだな」背後から声が聞こえてフィリックスは瞬時に振り返った。先刻までの奇妙な拘束も嘘のように解け、夢から覚めたかのように震えも不愉快さも消え去った。しかし糸で引っ張られたように振り返った先に居た”男”にフィリックスは唾を呑み込んだ。ノックスが先刻と同じ出で立ちでそこに居たのだ。さらに驚くことは、家族や院長のように石膏のよう