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碧い瞳は美男の証 8

「塵集めよりどう考えてもこの仕事のほうが待遇も環境も恵まれてるだろ。偶然でもサーグラントリーに雇われたお前が幸運だったことは間違いないよ。これも”運の巡り合わせ”なんだよ」フィリックスはジェラードの言い回しに”めまい”をおぼえた。確かに泥ひばりをして得たなけなしの金でその日暮らしを続けていくよりは最低限の衣食住が保証されているこの

碧い瞳は美男の証 7

しかしルイスの、まるで絹織物を縒り合わせるような繊細な手つきに思わずうっとりしてしまうほどだった。「お前、空き巣に入ったんだってな」すぐ傍でルイスから囁くように言われてフィリックスは肌が粟立った。先刻までの恍惚とした気分が一瞬で醒めて冷や水をかけられたような心地がする。ルイスの言葉を数秒かけてようやく理解できたのだった。「まさか泥

自由からの逃走 5

「で、今、何勝何敗なんですか?」昼下がり、休憩室備え付けのエスプレッソマシンのボタンを押しながらヒサノが訊ねた。こぽこぽと音を立てて黒い液体がカップの中に注ぎ込まれる。蟻の観察のようにその様子を凝視し、満足げな顔で笑う。その後ろでソファに体を沈めながらフリストフォールが消え入りそうな声で零勝七敗、と呟いた。「へえ、もう七日経ってた

自由からの逃走 4

ヴァレンタインの指示で教官が位置についたのを見て、フリストフォールとジェイコブは銘々間合いを取った。フリストフォールは少し離れたところに屹立しているジェイコブを見据えた。錆色の鋭い瞳がフリストフォールを捉える。視線が合ったその一瞬で体が縛り付けられたかのように”重く”なったのを感じた。ジェイコブの周囲だけではない、訓練場すべての空

自由からの逃走 3

或る日、訓練闘技場に現れたのは意外にもヴァレンタインだった。いつものように教官の指導の下、訓練していればいつもと変わらない様子で突然やって来たのでフリストフォールは少しばかり驚いた。ヴァレンタインの表情とわざわざこの場に足を運んだということは何か要件があるのだろうと思いはしたが、確信は得られない。「やあ、訓練はどうだい。順調かな」